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■戦雲の夢
著:司馬遼太郎
版:講談社文庫
価:733円
□読書ノート
引:軍議の席に盛親も出ていたが、木津川尻の模様が急報されたときに、さすがに明石全登は顔色をかえた。腰をうかそうとしたが、その直後にはいった報らせでは、すでに陥ちたという。全登は立ちかけた腰をふたたびしずめ、「すじはあらそえぬ。さすがは盗賊あがりの蜂須賀勢ではある。空屋敷を小ざかしゅう狙いおったわ」とあかるく笑ったため、一座の暗い表情が奇妙に晴れた。
感:長曽我部盛親を主人公にした関が原〜大阪の陣までの小説です。いかに生きるか、いかに死ぬかを生涯悩み続けた彼の弱さに親しみが湧きました。そして旧臣達の長曽我部家再興の希望になってしまったことが、主人公がいまひとつ真田幸村のような英雄豪傑になりきれなかった原因なのだとも思えます。筋もよくて才能もあるのにあと一歩なにかが足りなかった人。逆にそういう人物でも小説にできてしまう司馬先生は凄いと思いました。
引:盛親の気付いたことは、自分がどういう場合にも女を愛しきったことがない、ということである。どんな女に対しても盛親は煮えきったことがなかった。(中略)
(女にすれば、おれがこの態度ではどんな女でもおれを愛しきるわけにはゆくまい)(中略)
(あの女のみ攻めるわけにはいかないことだ) |